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「なんてご都合主義な……。まあいい。だが、俺のいったいどこが鈍感だというんだ?」
「ふふん。だって、あたしの判定だと、あの女の人には彼氏がいるからね」
「な!!」
俺の問いかけに、ジャッジちゃんは得意げに答える。まったく予想だにしていない回答。俺の頭は一瞬、彼女の言わんとすることがわからず、チャコのほうに答えを求めた。
「事実よ、ヤマト。わたしには、彼氏がいるの」
「嘘だろ。……チャコ?」
「ヤマト。愛は誓いあうだけじゃダメなのよ。愛は、結ばないと」
寂しげな口調のチャコであったが、俺をひっとらえようとしているのは変わりない。手に持った棒を再びかまえている。
思えば、俺とチャコは愛を誓ったことは何度もあったが、結んだことは一度もなかったかもしれない。俺は、些細な違いとしか感じなかったが、チャコの中ではまったく別物だったのだろうか。
「もう、あのころには戻れないわけだな」
「ええ。ヤマト、だから最後ぐらい、わたしの手で……」
チャコが最後まで言い終わる前に、俺は体を翻していた。犬死にするわけにはいかない。
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