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ちょうど、私の部屋の真下に位置する駐車場の地面に、水溜りが出来ていた。
他にも水溜りはあるが、目に留まったそれは、比較的大きかった。おそらく、何かきっかけがあり、陥没したアスファルトに、雨水が溜まるようになったのだろう。
何ら、気に留めるものではないはずだ。しかし、私は無性にそれが気になった。
私は水溜りに近付いた。何の変哲もない、アスファルトに溜まった水だ。なぜ、ここまで惹かれるのか。
私は、水溜りを覗き込んだ。そして、目を見開く。
水溜りに映った私は『今の』私ではなかった。やつれ果て、目の下に内出血を起こしている、死人のような顔色の、哀れな女はそこにはいない。
いたのは、健康的な姿をした『以前』の私だった。
一体なぜ?
私は息を飲み、水溜りの中の私を見つめた。水溜りの中の私は、頬は肉が付き、瞼の下も膨らんでいた。そして、血色がよかった。
その姿が朝日に照らされ、後光のように輝いていた。まるで天女だ。
これが私なのか。
私は、しゃがみ込み、まじまじと『私』を見つめる。
これは幻覚なのか。それとも別世界の私なのだろうか。それとも、本当に元の姿に戻ったというのか。
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