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水溜りの中の私を見つめていると、心が晴れていくのを感じた。
私は、ずっと、その水溜りから離れることが出来ないでいた。
翌日も快晴だった。黄金色の朝日が、部屋へと差し込んでいる。
昨日、私は、日が落ちるまで、水溜りの前で過ごした。お陰で、体がガタガタになったが、全然苦痛ではなかった。あの水溜りの中に映る『以前』の私を見るだけで、私は、幸せな気分に包まれた。今の異常で病的な自分ではなく、健康的で真っ当な人間である、かつての自分に戻ったような感覚を私に与えてくれるのだ。
私は、着の身着のまま、部屋を出ると、昨日の水溜りがあった場所へ向かった。あの幸せな感覚をもう一度得たかった。
1階に降り、水溜りがある駐車場へ歩み寄る。
そして、愕然とした。
水溜りが消えていた。そこにあったのは、アスファルト上に残っている、汚らしい黒ずんだ水跡だけだった。
水溜りは、乾いてしまったのだ。
私は、パニックを起こしそうになった。『以前』の私に会えなくなる。恐怖が押し寄せた。
気が付くと、私は部屋へと引き返していた。
部屋へと辿り着き、空のペットボトルに水を入れ、再び駐車場へ。
そして、私は、そのペットボトルの水を水溜り跡に流し入れた。
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