拒食症の私と水溜りと

6/23

2人が本棚に入れています
本棚に追加
/23ページ
 私は、水で口を濯ぎ、シンクの淵に顔を顔をつけた。  やはり食べられない。どうしても、食べ物を胃の中に入れることに、恐怖があった。食べ物は、体の肉となり血になる。それが絶え難かった。それが危険な思考だとわかっているが、どうしようもなかった。  私は、立ち上がり、テーブルの上の、お粥が入った容器を片付けた。中身は全て捨てた。  そして、私は、パキシルとルボックスを飲んだ。胃はさらに空になっている。ダメージがいくとわかってはいるが、仕方がなかった。  ピンクと白の錠剤を呑み終えた私は、再びベッドに横になる。  白い天井を眺めながら、私はぼんやりと思う。今まで幾度となく繰り広げた自問自答だ。  どうしてこうなったんだろう。  こうなる前の私は、どちらかと言えば、太っている方だった。自分では、標準だと思っていたが。  きっかけは、大学のクラスメイトの一言だ。  「あいつって、太ってない?」  直接私に言ったわけではない、たまたま聞こえてきたのだ。その発言をした人物は、間違いなく、私の方を見ていた。  それから、私の頭の中に、その言葉が絶えず渦巻くようになった。その言葉から逃れるように、食事制限をするようになった。一日に何キロもランニングをするようにもなった。     
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加