拒食症の私と水溜りと

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 晴れた空は、私をそんな気分にさせた。散歩でもすれば、少しは精神が落ち着くかもしれない。  そういった思いに駆られたのは、久しぶりだった。  昨夜、薬を飲んでから、すぐに寝てしまったため、シャワーを浴びていなかった。  私はシャワーを浴びる。浴室内の鏡は可能な限り見ないようにした。  浴室を出て、外出の準備を行う。デニムのパンツに、長袖のTシャツ。ラフな格好だ。これは、私の痩せた体格を隠してくれる。化粧をしたかったが、鏡を見たくなかったので、無理だった。元々遠出するつもりはないため、これで充分だろう。  外出の準備を整え、私は部屋を出た。廊下を歩き始めると、低血糖からのめまいが襲う。あまり長く外出すると、倒れるかもしれない。頃合を見計らい、戻った方が良さそうだ。  エレベーターから一階へ降り、駐車場を抜け、朝の住宅街へ歩き出す。気持ちが良い。澄みきった湖の中を遊覧しているようだ。これで、少しでも、拒食症が改善されるといいなと思う。  アパートがあるブロックの角を曲がる。塀に立てかけられた、不審者注意の看板の横を通り過ぎた。最近、この辺りで不審者が出るらしい。小学生や中学生が連れ去られそうになったという。物騒になったものだ。     
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