2人が本棚に入れています
本棚に追加
少し歩き、大きな通りに出る。これまでは、誰ともすれ違わなかった。
大通りをしばらく歩いていた時だった。私は『異変』に気が付いた。
すれ違う人が、皆ジロジロと私の顔を見つめてくるのだ。中には、幽霊でも見たかのように、ギョッとした表情をする者もいた。
私は悟る。服装のせいではない。ゾンビのように痩せた私の顔が、彼らの目を引いているのだ。
今まで、これほどあからさまに注目されることはなかった。外出しなかったこの数日で、一瞬で目を引くほど、痩せたようだ。
なおも、すれ違う人々は、私の顔に目を向けてくる。
私は、次第に、気分が悪くなった。外出時の爽やかな気持ちが、穴の開いた風船のようにしぼんでいく。
私は勢い込んで出てきたことを、後悔した。久しぶりに気分が高揚したせいだ。この展開は、推して知るべしだった。
私は部屋に戻ることにした。これ以上、人々の、好奇な視線には、耐えられない。
アパートを出る時とは打って変わって、暗澹たる気分に覆われたまま、私は踵を返し、来た道を戻り始めた。ここまでせいぜい五分程度しか歩かなかったので、すぐに戻ることが出来るはずだ。
アパートが見えた。入り口に入ろうとした私の目に、あるものが留まった。
水溜りだ。
最初のコメントを投稿しよう!