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床に仰向けに寝転がったままでいた僕の顔に、パサリと紙封筒が置かれた。なんだ? と思って手に取る。
「キミに対する辞令だよ」
目線だけ向ければ、僕の横に男が胡坐をかいて座っていた。
「関東支社、魂管理部回収課回収係。私の部下だ」
寝転がったまま封筒の中の書類を引き出せば、男の言う通り、僕の名前と共に配属先が記されていた。
「……仕事なんて、僕にできるのかな……」
聞こえないように呟いたつもりだった。けれど、男の耳に入ってしまったようだ。
「大丈夫だよ。私がしっかり指導するからね」
見上げれば、にこりとした笑みが返された。
先ほどまであんなに怒っていたのに……。
そういえば、僕には、叱ったり笑ってくれたり、親身になってくれる大人の男性がいなかったな……。
父親は物心つく前に亡くなっていたし、担任の先生は女性だったし。
ぼんやりと思っていたら、目の前に手が差し出された。何も考えずにその手を握り返したら、グイッと引っ張られた。身体が自然と起き上がる。
「きつい言い方をしてしまったがね、天使になって働くのは、きちんとした理由があるんだよ。本来の人生でできなかった成長をするためなんだ。キミは優しい子だから、死者の声をきちんと聴ける立派な天使になると思うんだ」
大きな手。温かい言葉。
冷たい雨が止み、雨雲が裂ける。
僕の心に、こういう大人になりたい、という希望が、太陽の光のように差し込んだ。
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