僕が天使になった理由

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 死んだら、もう一度人生をやり直せると思っていた。  なのに。  まさか天使になるなんて。  それも、前世の記憶が残ったまま、働かなければならないなんて。  白い空間で、思いもしていなかった自分の向かう先を示された僕は、呆然とするしかなかった。 「大丈夫か?」  スーツを着た男が、僕を覗き込む。 「な…………で……」  渇いた口で言葉を呟けば、それをきっかけに金縛りが解けた。  目の前の男に詰め寄る。 「なんで?! なんで、天使なんだ?! なんで、死んでから働くんだよ?!」 「お前は、自分が何をしたか、自覚がないようだな」 「自覚してるさ。自殺したんだ」 「ふん。どうせくだらない理由だろう」  男の言葉に、頭に血がのぼった。  目の前が真っ赤になる怒りを感じ、相手が大人ということも忘れて飛びかかった。 「お前に何がわかるっ。毎日毎日殴られて蹴られて。いじめなんて生易しいものじゃない。あれは暴力だったっ。先生だって知ってたけど、何もしてくれなかったっっ」 「だから、死を選んだと?」 「悪いかよっ。死んで呪ってやるって考えちゃいけないのかよっっ」  胸倉を掴んでいるつもりだった。  けれど、男は僕の腕を掴むと容易く外し、腕を捻って、僕の動きを封じた。 「放せっ。放せよっ、畜生っっ」  僕は暴れたが、スーツの男は信じられないほどの腕力。  振り解くことができなかった。  もがいているうちに、襟首を掴まれて引きずられた。 「お前は何もわかっていない」 「ふざけんなっっ。何すんだ、バカヤローっっ」  思いつく限りの罵声を浴びせる。  けれど、男は動じることなく僕を引きずると、扉を開けた。 「お前の死後に時間を合わせてある。自分の生を放棄したことがどんなに悪いことか、現実を見るがいい」  突き飛ばされ、開いた扉の向こう側に転がった。  そこは床のない黒い空間で。  僕は真っ逆様に降下した。 「うわああああああっっっ」
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