もう、着ないから。

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は、初めてカップルの別れの光景を目の当たりにしてしまった…。 勉強しようとした小テストの単語帳を開いたまま、だらしなく口を開ける。 取り残された彼は、大きく息を吸うと 「…好きな子の将来を真剣に考えない彼氏がいるのかよ…」 と、寂しそうにつぶやくと、来たバスに乗り込んだ。 しかし、彼は次の日から、自転車で学校を登校するようになった。 黒髪にショートマッシュの髪型。 トップはぴょんっと跳ね、自転車をこぐたびに向かってくる風でそれはふよふよと彷徨っている。 あたしがバス停に並び、バスを待つ5分の間に、彼を乗せた自転車は目の前を去っていく。 初見が初見だったせいか、あたしは彼が通り過ぎていくのを見るのが、日課になっていた。 *** 「鷹臣、お前3組の飯田さんに告られたんだって?」 「え? マジで? この間5組の矢田さんにも告られてなかった?」 その日も小テストのために単語帳を見て勉強をしていると、珍しいことに、同じ制服を着た男子と一緒に道路の向こう側を歩いて登校していた鷹臣くん。 彼は、両手をズボンのポケットに突っ込み、サブバックを肩から斜めにかけながら「んー」と曖昧な返事をしている。 「付き合わないの?」 「んー」 「もしかして元カノのこと引きずってる?」 「いや、もうさすがにそれはないかな」 「コイツ、フラれた当初相当落ち込んでたもんな」 「え? フッたんじゃないの?」 「いや、俺がフラれたんだよ」 「コイツ、いろいろ反応遅いし、伝えたい言葉が遠回しすぎて気づいてもらえないタイプ」 「あー…そうかも」 「つか、付き合ってない女子になんて話しかければいいのか分からない」
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