ふわふわで、甘酸っぱい

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初めて先輩を見たのは、入学してすぐの頃だった。 その日は中学からの親友、胡桃(くるみ)ちゃんと共に上級生の教室がある階へと足を運んでみた。 特に目的も理由もなく、ただの興味本位だったんだけど… ふと覗き込んだ2年A組。 その教室の窓際、一番後ろの席に座る先輩の姿を見たとき。 胸の奥の奥、ずーっと奥の方が小さな音を立てたような気がしたんだ。 開いた窓から入る風が先輩の栗色の髪を靡かせて、 窓から射し込む光が先輩をより一層輝かせて見せた。 周りの騒がしい先輩達とは違い、どこか近寄り難い雰囲気を醸し出しながらブックカバーのついた本を真剣に読む先輩の横顔がすごく綺麗で… 息をするのも忘れるほど、見とれてしまっていた。 『美梨(みり)、ボーッとしてどうした?』 『胡桃ちゃん…あの先輩が気になる、かも』 『はあ?一目惚れかよ』 控えめに指さした先を目で追う胡桃ちゃんは、そんな風に言っていたけれど… 正直、一目惚れなのかは分からなかった。 初めて感じたこの気持ちの名前が何なのか、この時の私はまだ知らなかったから。 それでも、とにかく先輩のことが気になって気になってしょうがなかったんだ。
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