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「呼ばないわよ……でも付き合うのは保留。私そんなにケーソツじゃないわ」
私の返事に彼は意外にあっさり応じた。
「まぁいいぜ? すぐ堕ちる女はつまんねーし」
イキがった発言するな、どこぞの漫画のキャラクターじゃあるまいし。
「名前は? お嬢サン」
年下にお嬢サンなんて言われる筋合いない。
「雨貝……詩歌」
「しいか?」
「詩と歌で詩歌」
「へぇ、いい名前だな」
突然、響は私に耳を寄せる。そして吐息混じりの声で囁いた。
「詩歌」
「……!」
一瞬、ふっと身体から力が抜ける。足から崩れ落ちる直前で、私は渾身の力を振り絞って踏み止まる。
「あ、電車来たわ。じゃーな」
子鹿のように震える私を一瞥し、響はヒラヒラと手を振る。終始表情が変わらなかった。
どこでそんな商売紛いのテクニックを覚えたのか……馬鹿にしてくれる。
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