2章

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「呼ばないわよ……でも付き合うのは保留。私そんなにケーソツじゃないわ」 私の返事に彼は意外にあっさり応じた。 「まぁいいぜ? すぐ堕ちる女はつまんねーし」 イキがった発言するな、どこぞの漫画のキャラクターじゃあるまいし。 「名前は? お嬢サン」 年下にお嬢サンなんて言われる筋合いない。 「雨貝(あまがい)……詩歌(しいか)」 「しいか?」 「詩と歌で詩歌」 「へぇ、いい名前だな」 突然、響は私に耳を寄せる。そして吐息混じりの声で囁いた。 「詩歌」 「……!」 一瞬、ふっと身体から力が抜ける。足から崩れ落ちる直前で、私は渾身の力を振り絞って踏み止まる。 「あ、電車来たわ。じゃーな」 子鹿のように震える私を一瞥し、響はヒラヒラと手を振る。終始表情が変わらなかった。 どこでそんな商売紛いのテクニックを覚えたのか……馬鹿にしてくれる。
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