第1章

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 希愛は席に着かず、右手でコップを握り締めていた。そしてアンダースローで右腕を振るった。しかしコップは手に持ったままで、つまり氷水を嵐の顔面に浴びせかけたのだった。嵐の目は点になっていた。ワックスで固めた髪は崩れてべったりと額に貼り付き、鼻から、口から、鼻水や涎のように水が滴り落ちていた。  「ほんとだ」  メイクの溶けた顔のまま、希愛はいっとう晴れやかに笑った。  「自由って、イイ」  (了)
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