04.ある日 森の中 魔法使いの女の子に 出会った

6/9
426人が本棚に入れています
本棚に追加
/823ページ
 ティナが魔法を解いたのか、トレントを燃やし尽くした火が消える。それを見て、俺は1つだけ妙なことに気付いた。さっきの2匹もそうだったが、あれだけ激しく燃えたにもかかわらず、周囲にはほとんど焦げ跡がないのだ。  そういえば、さっきも俺に絡んでいた根のほうまでは火が回ってこなかった。ひょっとすると魔法によって起こる現象というのは、術者が狙ったものにしか作用しないのだろうか。 「凄いもんだな。けど長い呪文を覚えるのも大変そうだし、君の言うとおり俺には難しそうだ」 「呪文やその名称は自由に決めていいんですけどね。これはあくまで精霊との契約時に、『この言葉を口にしたときに力を貸して』と約束するためのものですし」 「ええっ? そんな適当でいいのか?」 「いえ、適当というわけでもないんですよ。呪文にはイメージを固めやすくする意味もありますから。例えば、水を思い浮かべながら炎の精霊と契約した呪文を唱えても魔法は発動しません」 「魔法を使うときは、起こしたい現象を連想しやすい言葉を選ぶのが大事なのよ。炎の精霊に力を借りたいのに、『水を出して』って言うのはおかしいでしょ?」  リーリアも話に加わって補足してくれた。 「火の玉を思い浮かべながら『サンダーボルト』なんて唱えたりしても同じよ。その言葉が火のイメージを邪魔しちゃうから、最初からイメージしてない稲妻はもちろん、火の玉も出ないわ」     
/823ページ

最初のコメントを投稿しよう!