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とはいえ、体力の消耗具合から察するに、もう1時間は歩いている。いくら足場がよくないといっても、俺の足ならもう5キロ以上は進んでいてもおかしくない。
「想像以上に深い森だな。一体どこまで続いてるんだ?」
見知らぬ場所で先の見えない状況に陥り、さすがの俺も少々心細くなってきた。このまま帰れないのではないかという不安もあるが、それ以前にこの森には生き物の気配がほとんどないのだ。樹の枝の上で時折鳴く鳥はいるものの、リスやイタチといった小動物は全く見かけない。熊や猪に出てこられても困るが、ここまで静かだと生きているのが自分だけなのではないかという気持ちにさえなってくる。
俺が今の状況よりも、この場の静けさに不気味さを感じ始めていたそのとき――
「●○▲□▽▼■~~~~ッ!」
突然、森の奥からそれを破る悲鳴が聞こえてきた。
「な、なんだぁ?」
甲高い声は人間の子供のようでもあったが、何を言っていたのかはまるで分からない。やはりここは外国で、人間がいても言葉が通じないのだろうか?
仮に悲鳴の主が何かに追われているのだとしても、それが大型の獣だったりしたら俺にはどうしようもない。俺はそれまで歩いていた道を逸れ、少し坂になった場所に生えた木の陰にとりあえず身を隠した。
「●○▲、●○▲□▽▼■~~~~ッ!!!」
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