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(なんなんだよあれは。まるでファンタジーの生き物じゃねえか。ここはいわゆる『異世界』ってやつか?)
目覚めて最初に見た風景よりもさらに現実味のない存在を目の当たりにして、俺はようやく自分の置かれた状況を理解した。つまるところ、ここは別の国どころか別の世界だったのだ。
なんてことだ。日本でないことは覚悟していたが、まさかゲームやお伽噺の中に出てくる異世界とは。
「□▽▼■~~ッ!」
再び妖精が何かを叫ぶ。
理解不能な状況を前に呆けていた俺は、その声で現実に引き戻された。
(……どうする? 助けてやるか?)
親父に様々な武術を仕込まれているとはいえ、こっちは制服姿のまま異世界に飛ばされてきた一介の高校生だ。武器も持たずにあんな化物を倒せるとも思えないし、そもそも縁もゆかりもない妖精なんぞ助ける義理はない。常識的に考えれば、ここは無視すべきだろう。
「■○ーっ!」
妖精は小さな体からは想像もできないほどの大声を出し、懸命に助けを求めている。
あんな姿を見てしまうと、さすがに見殺しにするのは心苦しい。しかし武術の心得があるからこそ、俺には彼我の戦力差がよく分かる。あれは無理だ。
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