03.空手で折れるのはバットまで

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 なんと、行く手に生えていた2本の樹が突然動き出した。  大きな緑色の目をギョロリと見開き、牙の生えた口を三日月のように開いたその姿は、まさに先ほどの人面樹と同じものだ。 「うぉぉっ!?」  慌てて体を後ろへ反らし、重心を変えて急ブレーキをかける。  迂闊(うかつ)だった。あまりに非常識な存在を前にして、あんなものが何匹もいるわけがないと勝手に思い込んでしまっていたのだ。 (そうか、ようやく分かってきたぞ。この森に侵入した動物は皆あいつらが喰っちまってるんだ。あんなのが食虫植物みたいにじっと待ち伏せてたら、そりゃ素早い小動物でも捕まるわな)  そう気付いた瞬間にゾっとした。先ほど俺が身を隠していた樹も、一歩間違えばやつらの擬態だったかもしれないのだ。 「くそっ、なんて物騒な森だ!」  俺はどうすべきか判断に迷った。前は新たな2匹に塞がれているし、道の左右も木の枝が密集していて逃げ込めない。(きびす)を返して後ろへ逃げようにも、すでに背後からはバキバキと、さっきのやつが追って来る音が迫っていた。 (最悪だな……)  2     
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