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ほどなくして、俺は3匹の人面樹に前後から挟まれてしまった。前の2匹は邪悪な笑みを浮かべているが、後ろのやつは怒り心頭といった顔でこちらを睨んでいる。これぞまさに前門の虎、後門の狼というやつか。
(いやいや、マジでどうするこの状況。1匹でも倒せる気がしないのに、こんな化物を3匹も相手に素手でどう戦えってんだ)
実際のところ、人間の力で直径1メートル以上もある巨木をへし折るなど不可能だ。
空手の修行で大木を巻藁にして叩き続けた結果、数年かけて幹が抉れたとか、枝の葉が全て枯れてしまったという逸話はある。しかし相手がこちらにも反撃してくる化物ときては、とてもじゃないがそんな時間も余裕もない。
(空手の試割りを見て、『動かないものを壊しても強さとは関係ない』なんて言うやつも多いが……まさか本当に動く樹に襲われるとはな)
子供の頃から長年武術を学んできたが、俺は身につけた技術をここまで頼りなく感じたのは初めてだった。一応空手の構えをとってみたが、これはあくまで対人間用の技術でしかない。素手では熊やライオンにすら勝てない人間が、拳や足で砕けない樹の怪物をどうこうできるはずもないのだ。
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