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亮はそう言ってくれるが、実際のところ俺の実力は県大会ベスト4が関の山だろう。今回も3位決定戦で敗れたし、表彰台に届かないのはいつものことだ。
万年4位――それがルールのある試合における俺の戦績だった。
「気ぃ遣ってくれなくてもいいんだよ。俺は別に世界最強の男を目指してるわけじゃないんだから。つーか、なれるとも思ってねえし」
「そんな寂しいこと言わないでよ。僕に空手を教えてくれたのは君じゃないか……」
そう言いつつ、亮はまた目を伏せて暗い顔をする。
やれやれ、今じゃ俺よりも強くなったくせに、このウジウジしたところだけはいつまでも直らないな。
亮との出会いは中学生になったばかりの頃だった。
こいつは顔立ちこそ中性的なイケメンだが、趣味は漫画やゲームという、いわゆる『オタク』である。そのせいでクラスの不良やチャラ男にイジメられていたのを俺が助け、自分が通っている空手の道場に半ば無理やり連れて行ったのが始まりだ。
だが入門から3年経った今、亮の実力はすっかり俺を追い抜いてしまっていた。意外にも、こいつには天賦の才能があったのだ。
「その……お父さんは大丈夫? 優勝できなくて怒られたりしない?」
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