03.空手で折れるのはバットまで

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 慌てて足元を見てみると、いつの間にか足首に直径5センチ近くもある樹の根が絡み付いていた。俺が倒れた個体に気を取られていた隙に、背後にいた2匹が離れた場所から根を伸ばしていたらしい。 (こ、こいつら……枝だけじゃなく根のほうも伸ばせるのか!)  常に全ての敵を視界に入れておくのは集団戦における基本だが、本体が離れていたことで俺は完全に油断していた。しかも地面からは普通の樹の根もあちこちに出ていたため、やつらのものと見分けがつかなかったのだ。 (やべぇ、完全に動けん! このまま全身に絡まれたら……)  根はさらに伸び、すでに腰のあたりまで締め付けられている。このままでは上半身の動きも封じられ、あの巨大な口で頭からばりばりと喰われるのも時間の問題だろう。 (くそっ、やっぱりこれが人間の限界か)  2匹の人面樹が歪んだ笑みを浮かべながらこちらに近づいてくる。  背後から迫るプレッシャーを感じ、俺は死を覚悟した。だが、そのとき―― 「▽○△○▼ー◎っ!」  突如として響いた透き通るような声とともに、どこからかサッカーボールほどの火の玉が飛んできた。  ―― ボムッ! ――  真っ赤な火球が人面樹の1匹に直撃し、顔の上に生い茂った枝や葉の部分がたちまち燃え上がる。 「ゴァァァッ!?」     
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