03.空手で折れるのはバットまで

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 まるで松明(たいまつ)のようになった人面樹が諸手を上げて左右に揺れる。すると隣にいたもう1匹の枝にも火が燃え移り、2匹は頭から炎を上げながら暴れ回る羽目になった。 『ゴガガァァーーッ!!!』  こうなってはもはやカチカチ山の(タヌキ)だ。そのうち2匹の人面樹は全身火だるまとなり、ついには倒れて動かなくなった。  人面樹が死んだせいなのか、体を縛っていた根の締め付けが緩む。おかげで俺は体をぐるりと(ひね)り、拘束から脱出することができた。 (ふう、助かったぜ。それにしても、今の火の玉はなんだ? どこから飛んできた?)  火の玉の飛んできたほうに目をやると、そこには―― 「…………魔女?」  濃い紫のローブと円錐形の帽子に身を包み、杖を持って(たたず)む少女がいた。
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