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「親父? ああ、それなら気にしなくても平気だよ。親父は試合と実戦は違うってよく分かってるし。それに、俺が試合より喧嘩のほうが得意ってこともな」
「またそんなこと言って。空手を喧嘩なんかに使っちゃ駄目だよ。いつも師範に言われてるでしょ」
「分かってるよ。俺も先月でもう16にもなったんだから、さすがに素人相手の喧嘩は卒業するって」
出会いが出会いだっただけに、亮は俺がまた空手を喧嘩に使わないかと心配なようだ。
「だいたいウチは親父のほうがガチの実戦派だからな。ルールのある試合で負けたって文句は言われないんだよ。『男は本当に大事な、いざというときの勝負に勝てばそれでいい』ってさ」
「そうなんだ。そういえば、燈真はどうしてうちの道場に通ってるの? 実家も道場なんだから、お父さんに技を教えてもらえばいいのに」
「ああ、それはだな……」
そう、何を隠そう俺の家も空手の道場である。『弱いやつは強いやつに何をされても泣き寝入りするしかない。だから自分がやられる側にされないよう強くなれ』というのが持論の親父に、俺は幼い頃から様々な武術を教え込まれてきたのだ。
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