05.魔法使いの一族と女神の涙

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「魔物ですか? こういう拓けた場所や街道を歩いていればめったに襲われませんよ。数年前に勇者様が魔王を倒して以来、森の中や洞窟にしか出なくなりましたから」 「勇者と魔王なんてものまでいたのか? 本当にお伽噺(とぎばなし)の世界だな」 「私たちにはそれが普通なんだけどね。あ、町の入口が見えてきたよ」  俺たちの前をひらひらと飛ぶリーリアが前方を指差す。そこには大きな丸太を何本も繋いで造られた門があった。 「やあティナ、お帰り」  門の前で守衛らしきおっさんが声をかけてきた。髭面(ひげづら)に屈強そうな体格で、いかにも歴戦の戦士といった風貌だ。 「はい、ただ今帰りました。お客さんを連れて来たのでお祖母(ばあ)ちゃんに合わせたいんですが、門を開けていただけますか?」 「ああ、もちろんだとも」  ティナが特別親しい顔馴染みなのか、それとも町の人間に対しては誰にでもこういう感じなのか、守衛のおっさんは特に俺を怪しむこともなく門を開けてくれた。冒険者が多い町だというから、元々人の出入りに対しては寛容なのかもしれない。 「ここがティナの住んでる町か……」  町の中に入ってみると、俺の目の前にはまたも見慣れない光景が広がっていた。     
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