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すでに俺のほうは道場稽古ですら亮に勝てなくなっているのに、あいつはまだ俺に期待してくれている。次の大会ではきっと約束を果たそう。
俺は決意を新たにすると、その日は家まで走って帰った。
2
そして次の日――。
(やばい、寝過ごした!)
前日の試合疲れのためか、俺は起きなければならない時間を盛大に寝過ごしてしまった。
授業が始まるまであと15分もないのに、学校までは全速力で走っても20分近くはかかる。朝食も摂らずに慌てて家を飛び出したが、このまま普通に走っていても遅刻は確実だ。
こうなったら非常手段を用いよう。
俺は通学路の途中で急ブレーキをかけると、方向転換して大通りから住宅街に入った。今からやろうとしているのはかなりリスクの高い方法だが、遅刻しないためにはこれしかない。
そのまま真っ直ぐに走っていくと、丁字路の突き当たりにガードレールが見えてきた。その向こうには幅4メートルほどのドブ川があり、ここを跳び越えてショートカットすれば学校まで5分は短縮できる。
(よし……行っくぞぉぉ!)
腕を思い切り振り上げ、川に向かって全力疾走する。
俺の脚力なら4メートルを跳ぶこと自体はさほど難しくはない。ただ1つ問題があるとすれば、踏み切るときにガードレールが邪魔だということだ。
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