01.プロローグ 親友との約束

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 もしも踏み切りに失敗すれば(つまず)いて川にドボンだ。ガードレールを乗り越えつつジャンプするためには、それ自体を踏み台にするしかない。俺は覚悟を決め、さらに加速して勢いをつけた。 「せぇぇぇぇぁっ!」  上手く歩幅を合わせてガードレールの支柱に飛び乗り、気合とともに跳躍する。 (よしっ、タイミングばっちり!)  自分でも会心の大ジャンプだった。  これなら余裕で向こう岸に届く。そう思ったとき、対岸のほうから真っ黒な塊が飛んできた。左右に広げられた漆黒の翼と鋭い(くちばし)――カラスだ。 「うぉっ!?」  小学校で体育の授業をちゃんと受けた人間なら知ってのとおり、走り幅跳びにおいて跳躍中のフォームはかなり重要な要素だ。カラスを避けるために空中で姿勢を崩してしまった俺は、そのまま川に向けて真っ逆さまに落下した。 「のわぁぁぁっ!」  これはまずい。自分でジャンプした分を含めれば、水面まではたっぷり4メートルはある。この高さで頭から落ちたりすれば、下が水でも脳震盪(のうしんとう)を起こして溺れる可能性は十分にある。  そして――  ―― どぼん! ――   カラスの羽にも負けないほど黒く濁ったドブ川に()まり、俺はそこで意識を失った。
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