02.気がつけば不思議な世界

2/7
前へ
/823ページ
次へ
 目の前の光景は現実離れしているが、夢に特有の浮遊感がない。しかも吹く風や草の匂いまでがリアルに感じられて、逆にこれが夢だと思うほうが不自然なくらいだ。  何がどうなったのかは分からないが、とにかくどこか知らない場所に飛ばされたのは間違いない。 (そうだ、スマホのナビ機能で現在地を調べれば……)  肩にかけていたはずの鞄はいつの間にかなくなっていたが、ポケットにはちゃんとスマホが入っていた。  思わず天に感謝しながらスマホの画面をタッチしようとしたが、俺はそこで電源が入っていないことに気がついた。昨日充電するのを忘れていたせいで、電池が切れていたのだ。  これでは場所どころか時間さえ分からない。昨夜は試合の疲れで寝落ちしてしまったことが悔やまれたが、後悔先に立たずだった。 (こうなったら人のいる場所を探して訊ねるしかないか。とはいえ水の確保を考えると、川も流れてない草原のほうへ歩いていくのもな……)  一見したところ、ここは日本ではないように思えた。眼前に広がる草原はあまりにも広大すぎるし、右を向いても左を向いても高い山が目に入らないからだ。北海道ならこういう風景もあるのかもしれないが、それにしたって道路や電柱の1本も見当たらないということはないだろう。     
/823ページ

最初のコメントを投稿しよう!

425人が本棚に入れています
本棚に追加