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思案した結果、俺は自分の後ろに広がる森へ入っていくことにした。どれぐらいの広さか分からないのは不安だが、果てしないのは草原も同じだ。それに草原側には人の住んでいる場所がないと一目で分かるが、もしかすると森を抜ければすぐ人里に出られるかもしれない。
俺は草原に背を向け、森の中へと歩いていった。
「まるで富士の樹海だな……」
足を踏み入れてみると、そこは思っていた以上に深い森だった。一応木漏れ日は入ってくるのでさほど暗くはないものの、開けたような場所は全くないのだ。
ヘンゼルとグレーテルみたいに落としていくパンは持ってないし、目立つ小石を拾い集めている場合でもない。しょうがない、ここは熊の真似事をしながら行くことにしよう。
俺はその辺に転がっている尖った石を拾うと、すぐ傍にある樹の幹を引っ掻いて×印をつけ、さらにその下に『1』という数字を書いた。こうして少し歩いていくごとに数字を書いていけば、迷ったとき元の場所に戻るための目印になる。熊が自分のナワバリを示すために爪で刻む篝と似たようなものだ。
2
俺はそうしてしばらく歩いたが、森の出口はまるで見えなかった。
前につけた目印の場所にいつの間にか戻っている、ということはないので、少なくとも同じ場所を堂々巡りしているわけではなさそうだ。
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