01.プロローグ 親友との約束

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01.プロローグ 親友との約束

 1  夏も近づいてきた6月の夕刻、街はすっかり夕陽の色に染まっていた。  日が沈めばまだ涼しくなるこの季節、さっきまで体のあちこちに感じていた熱は治まりつつある。  とある県の市営体育館――その正面玄関の前に立ち、俺はごつい体の男たちがジョイントマットやパイプ椅子などを運ぶのを眺めていた。 (また勝てなかったな……)  目の前の体育館では、つい先ほどまで空手の大会が行われていた。  この俺――神代燈真(かみしろとうま)の成績は4位。準決勝敗退だ。 「燈真、まだ帰らないの?」  背後から声をかけられ、振り返る。  そこにいたのは、親友の成島亮(なるしまりょう)だった。 「亮か……」 「残念だったね。あと1回勝てば、お互い決勝で戦えたのに」  亮が同情と寂しさの入り混じった表情で目を伏せた。その手には、土台の部分に『中量級・準優勝』と書かれたトロフィーと賞状が握られている。 「決勝で戦うって約束、また守れなくて悪かったな。やっぱ俺の実力じゃ、準決勝までで精一杯みたいだわ」 「そんなことないよ、燈真は強い。今回はたまたま当たった相手が悪かっただけさ。君が準決勝で当たった優勝者の人、僕だって敵わなかったもん」     
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