千里眼

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もうずいぶんと昔の話になりますが、私の通っていた高校の近くに神憑りの方が住んでいました。どのような方かというと、その人はあらゆるものが「心」を通して見えるという、いわゆる「千里眼」という不思議な能力を持った方だったのです。 A子さん(仮名)という方だったのですが、二十代半ばぐらいの、この世のものとも思えないぐらいに美しくて綺麗な人でした。 私が当時通っていた高校周辺の噂では、A子さんはまだ未婚で、実家で家事手伝いをしながら、誰かに頼まれた時だけ千里眼でものを見て助言をしているという話でした。 A子さんが千里眼を使うのは、あくまでも人助けのためでした。そのため、新聞やテレビなどの取材はすべてお断りしているようでした。 A子さんは、千里眼を使って商売をするような人ではなかったわけです。 私や同級生達は、みんなA子さんが好きでした。 私達が部活で校舎の周りをランニングしていると、A子さんが自宅の畳の上で正座して静かに目を閉じていたりする姿が道路から窓越しに見えたりしたものです。 本当に綺麗で、しかも穏やかで優しい人でしたので、私達はA子さんの姿見たさに必要も無いのに何度も何度もA子さん宅の前をランニングで往復して部活顧問の先生からよく怒られたものでした。
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