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つれさられる
イラストを描く事が決まってからは、怒涛の様な日々だった
先輩は、毎日の様に家に来て打ち合わせ
来ない日は、電話で
細かいディテールから色の相談まで
こんなに細かく話してイラストを描くなんて
今後絶対にないと思うほど濃厚な日々だった
もちろん、お互い他の仕事もあった
お互いに寝る暇を削って仕事に没頭した
最終決定は、編集長の中川さんの一声だが
どうにか自分たちの意見を通す為に
中川さんを家に呼び出して先輩と私と3人で
相談もしたこともあった
こんなにも真剣に絵と向き合ったのは、いつぶりだろう
絵の細かいディテールから印刷されたものの色の調整まで
今まで口出したことも指示された事もない範囲の話ばかり
イラストに携わる事がこんなにもウキウキすることなのだと
初めて知った
イラストが納品されいっきに気が抜けた
燃え尽きて灰になった気分だ
やりきったどころじゃない
もぉイラストを描けなくていいかもしれない
それほどまでに満足のいく仕事ができた
本当にイラストレーターをやめてしまおうと思う程に
そんな魂が抜けた抜け殻の私の元に
「塩むすび先生!!いきますよ!!」
先輩が覇気をなげてくる
「・・・・どこに??」
「どこにって・・・今日は、受賞パーティーでしょ!!
思った通りドレスも髪もなにもできてない!!
行くぞ!!」
と覇気のないTシャツ、スエットの私をスポーツカーに
投げ込んだ
どこにつれて行かれようがどーでもいいと思っていたが
連れて行かれたのは、ブランド街だった
通りすぎるだけだろーと思っていたら
サラッと店の前に車を止めた
「おいっ、おりろ。行くぞ」
「行くってどこに??」
先輩が意地悪そうな笑顔で
「シンデレラになりにいくぞ」
とつぶやいた
目が覚める思いだ
仕立てのいいスーツを着た先輩に手をとられ
ブランドの服やカバンがきらめくショップへ
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