第25話 キスして、抱いて、温めて

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過去の男と比べるわけではないが、こんなに優しくされるのはほぼ初めてと言っても過言ではないと思うし、私はしっかり者で1人でも生きていけそうな女として扱われてきたので、このように優しくされるとくすぐったいような、心が弾むような、えも言われぬ様な気持ちになる。 あなたにとっての当然が、私には眩しく、そしてその当然の中から外れた道を生きてきた私にとって難関であることだけはわかる。 この場合女性たるものというのがきっとあなたの中にあるのだろうと思うと、とてもどうして良いやら何から始めたら良いやらわからないと思ってしまう。 何が正解なのか分からないものの、あなたの持つ女性像とはこんな感じなんだろうかと考えながらほぼ手探りで、オシャレをしてみたり…美容法を試してみたり、普段の姿勢を少し改めたりしてみた。 もちろん、そんなにすぐ効果が出ることも無く…遅々としており、普段全く興味を示せなかったものにも手を出している。 私今から変われるだろうかと漠然と思うものの気づいた時にはあなたのために動きたくて仕方なくなって。 今もうかれたまま、まだあなたに気持ちを明かすことも無いのかなと悩んでしまったり… 自分の心も思考も怖いから封印して、ただあなたに好かれるためにだけ動く。 重たい女と思われても構わない。 それしか私変えられないもの。 アホな女で構わないし、馬鹿にされても構わない。 あなたの瞳に映る女であり続けたいだけなんですもの。 軽蔑されてもいい。 後ろ指さされてもいい。 傷ついたって後悔しない恋をしていたい。 そんなことを思いながらあなたといるなんて、きっとあなたは思いもしないのでしょうね。 私もこんなこと思うようになるなんて思わなかったもの。 ずっと自分が楽な格好をして、女性らしさを考えたりもせず好きなものだけ選んで生きていたに違いないわ、今とさして変わらないではないかといわれればそうかもしれない。 でも、あなたの握ってくれた手が、あなたの触れてくれた頬が、撫でてくれた頭が、あなたのものですと主張しだしそうなほど、あなたに近づきたくて、たった一言が喉の奥でなにかにつっかえて押し留められている。 無理に出そうとすると身体の内側から叫び声が出てきて、痛めつける。 その一言を出せないよう、喉を潰せと言わんばかりだ。
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