第26話 目を開けてイくのは無理

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第26話 目を開けてイくのは無理

「○○、キスしよ?」 そう言われたので作りかけのお鍋の火を止めて、あなたの元に歩く。 座ってるソファの肩あたりに手をかけてあなたを見下ろす。 あなたの顔の左側に顔を近づけ頬に軽くキスして、頭を撫でてキッチンに戻る。戻ろうとしている私の左腕を掴んで 「そうじゃないでしょ?」 そう言うとその腕を引いてソファに引きずり込む。 「なんか、分かってないっぽいから、説明するよ?いい? キスして?ならさっきのでも正解。 でも俺、キスしよ?って言ったそうしたら、俺にもキスしたい欲求があるわけ。ここまで分かる?」 私は黙ってコクコクと頷く。 「そうしたら、正解は?」 私が覆い被さるような形で彼の上にいる目が合ってる目が離せない…。 正解? 「分からないと、俺がお手本することになっちゃう…これはこれで悲しいから気づいて欲しいな。」 キスしては相手に求めるものだけど、キスしよはお互いの同意がないとできない行為、つまりフレンチ・キスではなく、ディープな方。 というわけで、恥を捨てきれないまま顔を近づけて接したくちびるの隙間を舌で開く。 絡む舌が何とも言えぬ多幸感を与えてくれるが私は止められなくなる前に止めてみた。 「正解…よく出来ました〜」 そう言うとあなたは私の頭を撫でて耳元で囁く。 「今夜はご褒美あげるね?」 私はそそくさと立ち上がりエプロンを直してキッチンに戻る。 あなたは私のこのよそよそしさを嫌がるだろうかと、少し不安になりながら調理を進める。 今日は低温調理機をフル稼働してお肉を柔らかくしてビーフシチュー、そして家で焼いた白パン。 サラダも綺麗な色合いにまとめて、いつもより張り切っているので、そっちも褒めてくれると嬉しい。 白パンは焼きあがったものに少し、切れ目を入れて、間にチーズと胡椒をかけてトースターで焼けば完璧! 先程のキスから30分程が経過していた。 「ごはんですよ〜」 そう声をかける。 真ん中にシチューのお鍋を置き、パンは温かいままカゴに入れて。サラダは取り分けてあるものと別に大きなボウルにも用意した。 「うわ、美味しそう…なにこれ?店?」 そう言って楽しそうに席に就くあなたの顔はキラキラしてて、喜んでくれているのが分かる。 「お口に合うといいな」 と、装ったビーフシチューを前に置く。 「なんだこりゃー…ファミレス通いでは見れぬ料理…!」 めっちゃ喜んでくれてる。 まだ食べてないのに見た目から褒めてくれてる…1人でご飯食べてる時はこんなの言ってもらえないもんな…。 少し気恥しいのもあるけど、人に食べてもらえることの嬉しさが今は勝ってる。 「いただきます。」 そう手を合わせて食べ始める姿に歓喜さえ覚える。 いつか毎日作ることに飽きてしまったり、作る意義が思い出せなくなった時は今日の日のことを思い出そう。 そう心に固く誓った。 サラダのドレッシングや、ビーフシチューの調理法とか、色々なことに興味を持ってくれる…嬉しい。 震えちゃうくらい嬉しい…犬なら嬉ション待ったナシである。 幸せってこれかと思わされた瞬間であった。 まぁ自分で作ってるから自分で味は分かってるけど2人で食べるご飯の美味しさは1人で食べていた時とは比べ物にならない。 私が食べていたものってこんなに美味しかったのか? 毎日ご飯を食べてる姿が見たい…。 「そんなにじっと見つめられたら、食べづらいよ…。」 「ご、ごめんね…ご飯食べてもらえたのが嬉しくて嬉しくて、つい見つめちゃった。 私今日を忘れないと思う。」 そう言う私の頬に触れ、反対側の頬にチュッとキスしてくれる。 優しすぎて辛い…どうしたらいいのか…。 私がワタワタしていると頭を撫でて… 「これから毎日だって食べれるし、俺の作ったご飯とかも食べて欲しいし。」 何だこの幸せな会話…。 ふわふわ感が飽和してたまらず、サラダを口にして平静を装う。 そうこうしてる間にご飯を食べ終え、お皿を洗っていると、あなたが奥の部屋でお布団を敷いているのが見える。 お布団干しておいてよかった。 あなたがお布団をふかふかと手で押しているのが見える。 気持ちいいのかな?分かる、暖かくて、お日様の匂いのする布団はとりあえず正義だもんね。 洗い物を終えようかというタイミングで電子音のメロディがキッチンに鳴り響く。 「お風呂湧いたよ〜」 そう声をかけるとあなたはバスタオルと下着を持って駆け寄ってくる。 何故か私の分も持っている。 いやいや、お風呂ワンルームの時より広いと言っても2人で入るには手狭だと思われる。 「もう洗い物おわるでしょ? 一緒に入ろう。」 「狭いんじゃない?私、後でもいいよ?」 そう答えると、あなたは私の手を握り、黙って脱衣所まで来た。 「俺は狭くてもいいから一緒に入りたいんだよ。 むしろ狭くて密着できるならそれはなお良し。」 そう言うと私のエプロンを外し、ニットを脱がし、ブラジャーを外し、ジーパンに手をかけ、一気に下ろす。 何も言えないうちに真っ裸に剥かれてしまった。 そんな手早い行動の中、あなたは自分の服も脱いでいた。 私は浴室に入りシャワーを出し始める。 最初の5秒くらいシャワーが冷たいので予備行動だ。 湯気が出てきたら手を入れて、温度を確認する。 適温だ。 クレンジングをする前にハンドタオルをお湯に浸し、絞る。 ホントは熱々の蒸しタオルが良いらしいが、クレンジングを始める。 顔から落とす時にタオルで拭き取る。 洗顔のための泥パックを始めると後ろから手が伸びてきて、ボディソープを手にすると左の掌にボディソープを出し、泡立て始めている。 私は泥パックを始めていたので喋ることが出来ず無言で後ろを振り返り、アイコンタクトを試みる。 あなたはなにも答えないが私の首から肩にかけて、優しく泡で撫でるように洗い始める。 泥パックを落とす時に髪の毛と体も一緒に洗ってしまおうと思っていたのでどうしようかと考え始める。 すると、あなたはすごいスピードで自分の体を洗い始める。 そして自分に着いた泡で私のことを洗い始める。
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