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海岸線の約半分を進んだところで、
蛍は歩道と浜辺の境界線となる
土手に腰を降ろした。
"故郷"を出てどのくらい歩いただろう?
到底計算できないほどの道のりを歩んで
蛍は今ここにいる。
周囲には海に来ている人はもちろん、
歩行者の姿もない。
ただただ無機質な車が彼女の後ろを
駆け抜けていくだけだ。
これからどうするべきかなんて
考えが回るはずもなかった。
急に自身の喉に渇きを感じた蛍は
リュックの中の水筒の水を
喉の奥に流し込んだ。
そして、頭の中からあらゆる
思考を排除し、ひたすらぼんやりと
海を眺めていた。
果たして、どのくらい時が経っただろうか。
先程まで海面を照らしていた太陽は
既に大きく西に傾き、
蛍は自身の存在を示す影が
車道まで伸びていることに気がついた。
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