自由を求めて

10/11
前へ
/89ページ
次へ
日没まで蛍に残された時間は 決して多くない。 夜になれば周囲は漆黒の闇に 支配され、犯罪や事故に巻き込まれる 危険性が高まるということを 彼女は重々承知していた。 しかし、このままこの場に留まっていても どうすることもできない。 日中、透き通るように青かった空は 既に紅に染まり始めている。 蛍が腰を上げ、立ち上がろうとした その時だった。 「おい、こんなところでいったい 何をやってるんだ?」 声のする方を振り返ると、そこに 立っていたのは、スポーツブランドの ジャージに身を包み、野球帽を被った 長身の男。 まだ若い。年齢は20代後半といったところか。 「……」 「もうすぐ日没だが……お前、名前は?」 「……蛍。宮野蛍です……」
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加