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CICで船務科が情報処理に追われている頃、
艦橋もまた、戦場と化していた。
航海科の隊員たちが窓際に張り付き、
横波を喰らわないよう細心の注意を払う。
波と風は一段と激しさを増し、
いずもの船体を叩きつける。
そのたびに2万7000トンの巨体が
ゆりかごのごとく大きく波打った。
『整備区画でえと者多数!空自の整備員です!』
「艦長より衛生長へ、ただちに救護班を
整備区画へ向かわせよ。」
"えと"とは海上自衛隊用語で"嘔吐"を示す。
日々Gに耐え、極限まで肉体を鍛え上げている
戦闘機パイロットと違い、激しい揺れに
慣れていない整備員は、
前代未聞の波浪で船酔いしてしまったようだ。
「応急長、艦に損害は?」
『こちら応急指揮所。システムオールグリーン。
異常ありません。』
「よし、針路、艦隊陣形維持。
このまま横須賀を目指す。」
3時間後、艦隊は1隻も欠けることなく、
低気圧を突破し、横須賀への
帰路についた。
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