統合戦術指揮官

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2022年―夏― 東京オリンピックの熱気は すっかり過去のものとなったにも 関わらず、太陽の日差しは 今日も弱まることを知らない。 そんなサウナのような屋外とは裏腹に、 この施設の室内は空調が利いてひんやりと 涼しい。 新宿、市ヶ谷の防衛省。 その一室で、 きっちりとアイロンがけされた 純白の第3種夏制服を着こなし、 結城は少し緊張した面持ちで直立していた。 勤務先の舞鶴に直属の上官を通じて 海上幕僚監部から出頭命令が届いたのだ。 名指しでの出頭命令などただ事ではない。 結城の目前には、シックな木製デスク、 その机上には綺麗に磨かれた 『海上幕僚監部人事課長』のプレートがある。 「さて、結城一尉、君に来てもらったのは 他でもない。今横浜で改修工事を受けている いずものことだ。」 今から2年前の2020年12月、 相次ぐ北朝鮮の弾道ミサイル発射や、 国家主席死去に伴う、中国海軍の 暴走とも取れる海洋進出の活発化などを 踏まえ、政府は国家防衛の指針となる 防衛大綱を改定。 弾道ミサイルへの対処や、国際協力、 離島防衛など、時代に適応した自衛隊の 新任務が数多く盛り込まれ、その中には "多目的防衛型空母の保有"も含まれていた。 そして、その候補として、白羽の矢が 立ったのが、ヘリコプター護衛艦いずも であった。
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