自由を求めて

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だから、この世で生きていくための知恵、 知識は全て祖母が教えてくれた。 掃除、洗濯、お料理、裁縫、食事のマナー、 夕陽が綺麗な日の翌日は晴れることを 教えてくれたのも祖母だった。 「蛍、貴女はお父さんもお母さんも いないのに、本当に手のかからない子で、 こんなに立派に育ってくれたわ……。」 蛍は首を横に振った。 彼女の我慢だけではない。 祖母が精一杯の愛情を蛍に注がなければ、 今の自分はいなかったのだと 蛍は伝えたかったのだ。 「最後に……私から貴女に伝えなきゃいけない ことがある……聞いてくれるかい?」 今度は大きく首を縦に振る。 祖母はそれを確認して笑みを漏らすと、 ゆっくりと言葉を絞り出した。 「蛍、後ろのタンスの一番上から あの箱を持ってきてくれるかい?」 "あの箱"と言われて蛍はすぐにわかった。 小学生の頃、たまたま見つけて開けようと したところ、祖母からきつく叱られた ことをよく覚えている。 『私がいいと言うまで決して開けては いけないよ。開けたら呪いで寿命が 縮んでしまうからね。』 今思い返せば、祖母には、蛍が 小学生でタンスの一番上に 手が届くようになるとは 想定外だったのだろう。 実際蛍の背は同級生と比べても高い方だった。
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