自由を求めて

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祖母の葬式を終えて2週間。 蛍はたったひとり、主を失った家で 体を横たえていた。 祖母の葬式は悲しむ間もなく、 どこからかやって来た大人たちによって 執り行われ、蛍には文字通り入る隙間も なかった。 それゆえに、葬式や告別式では 感じなかった悲しみが今となって 孤独な蛍の心を蝕んでいた。 (私はこれからどうすれば……) 13歳でたったひとりの家族を失った。 これから先、どうやって生きていけば いいのだろう。 答えてくれる大人は、誰もいない。 蛍は静かに身を起こすと、 "祖母の前"で膝を折って座った。 「おばあちゃん、私ね、海が見たいよ。 この家の外の世界が知りたい。」 遺影の中の祖母は、優しく微笑みかける だけで答えてはくれなかった。 祖母の墓前に据えたあの簪の箱を開ける。 赤みがかった羽、透き通るような 硝子が太陽の光を反射して キラキラと輝いていた。 何度見ても美しい。 「!!」 その時だった。 わずか一瞬、蝶が硝子細工から飛び出して 宙を舞った。 そんなことが起こりうるはずはない。 だが、目の錯覚ではない。 確かにそこに本物の蝶がいたのだ。 (貴女はもっと、広い世界に羽ばたきなさい。) 硝子細工の蝶がそう語りかけている ように感じた。
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