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「やっぱり全員同じってのは」
「あの、寧ろ、全員が特定の災害で死んだという設定は、ゾンビエリアのリアリティが増すと思うのですが」
一番奥に座っていた、若いゾンビ役が発言した。
神父のような格好をしていた。
他のゾンビ役よりハキハキして賢そうな感じだ。
「ああ、そういうのも有りかな……。ゾンビエリア全体を、災害のあった町という設定にするとか?」
「ええ」
「ちょっと上に提案してみようか。セットは別に変えなくてもいけそうだし」
私はその旨資料にメモした。
「貴方、そういう関連、何か勉強しているとか?」
私は言った。
「オーストリアの神学校で、悪魔の与える恐怖について研究していました」
「へえ……」
私は適当に返事をした。
神学校って、今でもあるんだ……。
「ちなみに貴方も死因は」
「はい、僕はたまたま、この方達の町の教区教会に、用事があって来ていたところを巻き込まれまして」
「圧死? 溺死?」
「溺死です」
「溺死が二人か……まあ、洪水ならそうなんだろうけど」
私は再び右手を挙げた。
「他に溺死の方は?」
二、三人を除いた全員が手を挙げた。
「ううん……あとは上と相談してからだな……。個人的には、面白い設定だと思えてきたけど」
私はパイプ椅子に座った。
「ちょっと時間余っちゃったな……。ところで、皆さんの志望の動機って何ですか? 聞いていい?」
私は話を変えた。
お化け役は全員日給制なので、早めに帰す訳にもいかない。それに雑談していれば、他の死因のアイデアが出てくるのではと思った。
「アルコール禁止の職場だと聞いたので」
ひとりのゾンビ役が手を挙げた。
かなり小柄で、未成年の少年ではないかと思われるような感じだ。
私は履歴書を確認した。
一応いくつかの職歴が書いてあった。
野菜売り、古着売り、墓掘り。
娼館の呼び込みと書いているのは、夜の店の呼び込みという意味だろうか。
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