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まあ、これくらいの職歴があるなら、それなりの年齢ではあるのだろう。
「ああ、禁アルね。珍しいって言われるよ。禁煙は多いけど」
「そういう職場が理想だったんです。僕たちもう、アルコールは沢山ですから」
全員が、コクコクと頷いた。
「え……私生活までその設定に合わせてるの?」
私はちょっと驚いた。
ゾンビ役ひとつで渡り歩いている、ゾンビ役のプロの方々だろうか。
「凄いプロ根性ですね」
私は敬意を込めて言った。
「僕たちは本物ですから」
小柄なゾンビ役が言った。
「本物? 一流って意味ですか?」
私は思わず笑った。
馬鹿にした笑いではない。そこまで堂々と言える人間に、ここでいきなり会うとは思わなかった。
「凄い自信ですね」
私は言った。
「もしかして、皆さん同じ町の出身?」
私は全員を指さした。
「はい。しばらくビールの洪水に浸かってたので、みんな腐乱が遅くて」
女性のゾンビ役がにっこりと笑って言った。
「ああ、アルコール標本みたいな理屈ね」
私は言った。
「設定細かいね。みんなで考えたとか?」
私は少しずつゾンビ役達に好感を持っていた。
無愛想な人もいるが、真面目な人たちだと思う。
「実話ですから、考える必要はなかったですよ」
小柄なゾンビ役が、人懐こそうに照れ笑いした。
「でも、そういうネタよく調べたよ。去年までのゾンビ役は、ゾンビウイルスが原因っていうのばっかりで。あれは流行ってるの知ってるけど」
ウイルス、へええ、という風に全員が真面目な感じで頷いた。
「私たちの時代には、ウイルスなんて、もの凄く偉いお医者様でもまだ知らなかったもんなあ」
中年のゾンビ役が言った。
「時代によって、ゾンビになる方法もいろいろなのね」
女性のゾンビ役が言った。
「皆さんはその設定でいいと思いますよ。変に流行りに合わせない方が」
私は言った。
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