冷たい毒飲料をどうぞ

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「あたしの友達が、殺人に問われたらどうすんのよ」 「それは大丈夫です。取り憑いている間に、きちんと証拠隠滅はしておきました」 「そういう問題じゃないわ!」 「本当に申し訳ありません。何とぞ体を」 「いい訳ないでしょ!」  咲子は、自分の体の前に立ち塞がった。 「馬鹿じゃないの。もう死んでる体でしょ。使えないでしょ!」 「いえ、ところが、死んだ本人でなければ、人形に取り憑くのと同じ要領で体を使えると、別のアパートにいた霊からアドバイスいただきまして」 「それじゃ、ゾンビじゃないの」 「ええ。長くは持たないとのことなんですが、今すぐ商談に行く程度なら使えるかと」 「ムリムリムリムリムリムリ!」  咲子は、自分の遺体をガードするように、両腕をブンブンと振った。  それから何日も、咲子は自分の遺体の前にじっと座り続けた。  幽霊なので疲れることはないが、このままでは、おちおち成仏することも出来ない。  八月晦日(はつみ)は、時折隙をみては咲子の体に入り込もうとし、咲子にじろりと睨まれては断念していた。  これ、いつまで続ければいいんだろう。  このままでは、この部屋は、幽霊二体が睨み合う激レアな事故物件になってしまう。  何日も過ぎたので、体は既に腐乱していた。  軽いドライアイに悩んでいた焦げ茶色の眼球は、乾いて白くなり、口は、端から形が崩れて中が黒くなっていた。  生きてこの場にいたら、きっと臭いも凄いんだろうな。  そろそろ誰か様子見に来るかも。  部屋、片付けて置けば良かった。  咲子は、部屋を見回した。 「ひとつ聞きたいんですけど」 「何でしょう」  八月晦日(はつみ)は姿勢を正して言った。 「ここの部屋で、あなたが死んだってことは、ここ事故物件だと思うんですけど。わたし、何も聞いてないし、家賃も変わらなかったんですけど」  咲子は言った。
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