落伍者の繰り言

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 それでも、私がムキになって隊に追いつこうとするのは、いつのまにか意地や誇りといった美徳が身についていたからに違いない。こんな生き方をしているが、修羅場をくぐって命を何とか永らえることができていれば、学はなくとも知恵はつく。この10年とちょっとの間に出会ってきた傭兵仲間は、あるものは死に、あるものはまだ生きてどこかへ行ってしまったが、その中のひとりとして私は忘れたことがない。そして、彼らが決まって口にしていたのは、この一言である。  「いつ死ぬか分からないが、遅れだけはとりたくない」。  これまで迂回して行軍してきた経験から、ここを徒歩で抜けるのにだいたい3日と見積もって、それだけの水と食糧しか持ってこなかった。あとは、重くなったなと感じたところで捨ててしまった。前払いの金で調達した装備もけっこうあったが、日除けマントの下に残っているのは、いつもの革鎧と剣とクロスボウだけである。矢は1ダース背負っていたが、夜中に襲ってくる獣を追い払うのに皆使ってしまった。銀の矢が1本だけ残してあるが、これは我ながらみみっちいと思う。傭兵仲間のバクチで巻き上げたものに過ぎないが、捨てるのがなんだか勿体無かった。元の持ち主はその直後の戦闘で死んでしまったが、それは別に関係ない。  この3日間、昼間はマントに身を包み、うずくまって熱さをしのいできた。夜になってようやく、月と星を頼りに歩き出すのである。これが最後の夜であった。これで日が昇るまでに国境を越えられなければ、私は足元で砕ける獣の骨の仲間入りをすることになる。こんな荒野で何を食っているのか知らないが、恐らく人間に真似はできないだろう。
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