梅雨の日

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その日は、梅雨真っ盛り。 突然の雨。 少し呆然として空を見る。 塩田中の隣に最寄り駅の塩田町。 たいした距離ではない。 走ろうかと思ったその時。 「あれ、市村さん傘持ってないの?」 海野君だった。 「あ・・うん、止みそうにないし。」 「ふーん。」 海野君は、私の隣に来て大きな黒い傘を開く。 「入ってきなよ。駅まで送るよ。」 「え・・・。い、い、いいよ!そんな。」 動揺しまくってしまった。 「いいじゃない。濡れたくないでしょ。」 「そりゃ・・。まあ・・・。」 恥ずかしい。 その一言に尽きる。 男の子と相合傘なんてしたことない。 「さ、行こう。」 耳まで赤くなっているのがわかる。 断りきれず私は、海野君の傘の下へ。 「梅雨の時期だし、折りたたみくらいロッカーに置いときなよ。」 「うう・・・。今度から絶対そうする!」 こういう時に限ってクラスの男子達に見つかる。 散々、囃し立てられる。 私は、全然顔を上げられなかった。 チラっと海野君を見ると・・・ピースしてニコニコしている。 なんなの、こいつは!!! 「市村さん、みんな祝福してくれているよ。」 もう、走って逃げたい! 「海野君、恥ずかしくないの?」 「なんで?」 「わからないかな、この人は・・。」 鈍感かぁ! 「睨まないでよ、怖いなあ。」 能天気か! 「濡れるよりマシでしょ。」 「なんか、ずぶ濡れになったほうがマシのような気がする。」 「俺は、絶対濡れたくないね。今、ここで市村さんに急にキスされても絶対傘は、離さないよ。」 なんだよ! もう、キスしてやろうか。 とか、思ったけどこんなところでファーストキスを失うわけにいかない。 ふと、海野君の右肩が目に入る。 ずぶ濡れだ。 傘が、私のほうに傾いている。 やさしいんだ、この人。 お調子者かもしれないけど。 駅までの地獄のような時間は、すごく長く感じた。 「あ・・りがとう。」 ぎこちなく言葉がでる。 「いえいえ、どういたしまして。」 海野君は、バックから何か取り出す。 「これ、駅から家まで使ってよ。」
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