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その日、大量のコピーを頼まれた私は、隣の課の友人に待ってもらいながら残業をこなしていた。仕事の後に、食事に行こうと約束をしていたのだ。早く終わらせなければ予約時間に遅れてしまうため、私は必死に仕事をこなした。そして千枚を超えるコピーを何とか終わらせると、意気揚々と支度をして部屋を出る。
「お待たせ。怖いからって待ってもらってごめんね」
「ううん、大丈夫。こちらもついでに残っていた仕事を終わらせることが出来たから」
私たちの働いている課は新館の十階にある。
帰宅するならば、エレベーターに乗るのが普通だ。私たちはいつも通りに二基あるエレベーターのうちのひとつを呼んだ。しばらくして、高いベルの音が静かなフロアに響く。エレベーターの到着を知らせる音だ。いつもと同じように乗り込むと、一階のボタンを押し、次に開閉ボタンを続けて押す。ドアはゆっくりと閉まり、エレベーターが動き始めた。
ふと階数を表示しているパネルを見ると、何故か、押した覚えのない三階と二階のボタンに光が灯っている。
このエレベーターは、外から呼んだ場合、このパネルに表示されている階を示すボタンは光らない。中から直にパネルのボタンを押した場合のみ、光るようになっていた。私は持っている荷物で間違って押したのだと思い、光っているボタンを素早く二回押した。このパネルでは、間違った階を押した場合に取り消すことが出来る仕様になっている。素早く続けて二回ボタンを押せば、取り消しが出来るはずだった。
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