エレベーターの悪夢

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 しかし、何度試してみても、二階と三階の光が消えないのである。  このパネルは両側にある。友人もどうやら間違えて押してあることに気づいたようだった。隣から、タンタン、タンタン、と二回続けてボタンを押す音が聞こえてくる。何故取り消しが出来ないのか分からないまま、私たちは短い時間の間に、何度も取り消しを試みた。友人が押している間は私は押さず、私が押している間、友人は手を止めていたように思う。そうして何度も取り消しを試みたが、光は灯ったままなのだ。そしてあっという間に三階に到着した。  チン、と高い音が鳴って、私たちと、誰だか分からないがエレベーターを待っている人に到着を知らせた。いや、知らせたはずだった。  ゆっくりとドアが開き、しかし、そこにはエレベーターを待つ人の姿はなかった。三階のフロアにはもう誰も残っていないらしく、すっかりと電気が消えてしまっていて真っ暗だ。日が落ちてもなお、十階は蒸し暑い空気に満たされていたのに、この階はどうしたことかひんやりとしている。剥き出しの腕に鳥肌が立つほどだ。その階では誰も乗ってくることはなく、間も無くドアは閉じた。  軽い浮遊感の後、またチン、と高い音がする。次にエレベーターが止まったのは二階だった。     
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