星祭り

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 空に近い神社の境内  短冊片手に くいっと首を反らす  見上げた夜の色は 深く濃い紺青(こんじょう)  散らばり煌めく一面の白い明滅に 今年もうっとりと目を細める 「天の川、見える?」  それだけのはずだった  突然耳元に降ってきた あなたの声さえなければ 「年に一度の祭りだし、皆で楽しもうよ」  近い 近いです  声も顔もどっちも近いです 困ります 私 「朝顔の浴衣、似合ってるね。可愛い」  初めて会った男の子にこんなこと言われて すごくすごく困ってます  なんて返事したらいいの?  何をどう話したらいいの?  なんにもわからない  〝夏織(かおり)は、ほんとにおとなしいね〟  〝その引っ込み思案、なんとかしないと彼氏もできないよー〟  女子の友だちですら あんまりいない私なのに  もう逃げ帰っていいですか? 「帰らないで。俺、君にひとめ惚れしたんだ」  嘘  嘘でしょう?  こんな地味な私に そんなこと有り得ない 「君が、いいんだよ」 「大丈夫。ありのままの君を、俺が見てる。ずっとだ」  降る星明かりのもと あなたがくれた言葉が私の身と心を震わせた  ほんとに? ほんとに大丈夫?  嬉しい言葉を  本当はずっと欲しかった言葉をくれたあなたに  心を開いても 『わたしの心』を見せても 大丈夫ですか?
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