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街灯のスポットライト 柔く滲む白光
踊るように舞い散る花びら
ピンクに染まった水面
ゆるゆると流れゆく花筏
たゆたう落花を見送る私は ひとり
短い盛りを終えた花びらは
流れに乗って街を出てゆく
先にこの地を去ったあの人を追いかけるように
夢を追い 旅立った彼を 私は追えなかったのに
そよ風に儚く散らされた花びらは 命を終えても追っていけるのか
なんて皮肉
あれは幻
空に近い鄙びた社
星降るひと時 非日常
あれは夏の夜の幻
だから簡単に壊れてしまう
だって私は ここから離れられない
この小さな街が 生きていく全て
前だけを見つめ 真っ直ぐに突き進む あなた
私の知らない世界で夢に向かい 日々を送る あなた
私の支えを必要としない あなた
そんな強いあなただから ここで帰りを待つことが もう つらい
だってね? 思いきって送ったメッセージ もう何日返信がないんだろう
不安で 不安で 不安で
だからね? もう 待つことをやめたいの
ゆるゆると流れゆく 花筏
ぐにゃりと滲み 揺れる ピンクのさざ波
落花の最期の艶姿
ゆるゆると流れゆく 花筏
ただ見送るしかできない私は また『ひとり』になる
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