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空に近い 鄙びた社
紺青の空から降るは 白銀の欠片
場所 空気 人々の賑わい
手に持つ短冊の色
全て あの日と同じ
あの日との違いは 私の浴衣だけ
白地にパステルカラーの朝顔は 落ち着いた色の古典柄に
けれど濃藍の生地に咲く朝顔は より鮮やかに色づいた
朝顔柄に込められた意味は 愛情
今夜は 年に一度の二星の逢会
私も同じ夜に 愛情を身に纏う
伝えたいの あなたに
痛んだ心が行き着いた先
なんのために私たちは出逢ったんだろう
幾年もの後悔の果てに 見つけた光
もう一度 交わる道を探すため 数年ぶりにここに来た
短冊に最後の願いをしたためる
——夏の夜空に 星を織る
この言葉に意味なんてない
けれど 願いならある
〝俺たちの名前、組み合わせると、ひとつの文になる〟
あなたも これを覚えていてくれたなら
いいえ 忘れていても思い出してもらう
もう一度
もう一度 あなたと 運命を重ねてみたいの
そのための これは私のけじめ
「天の川、見える?」
鼓膜を揺らす 懐かしい声
笹の葉から指が離れた
短冊が風に乗っていく
天の川? 見えない
見えるのは たったひとり
「朝顔の浴衣、似合ってる。綺麗だ」
星夜 懐かしいあなた
私の目に映るのは あなたひとりだけ
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