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『リヒト、起きろって』
ライの呼びかける声で、俺はハッと目を覚ます。
目に映るのは、蜘蛛の巣が張り巡らされた薄汚れた5mほどの高い天井と、照明1つない壁。上部に人の顔がやっと覗ける程度の小窓がついた扉と、部屋の反対側には3mほどの高さに窓が1つあるのみ。
室内はどこからともなく流れ込む冷気で、8月だというのにひんやりと冷たく、ひどく薄暗い。それに、室内の空気は少し湿っており埃っぽい。いかにも独房のような様相である。
そうだ、思い出した。ここは “ 反省塔 ” と呼ばれる場所だった。
昨夜0時過ぎ、俺達はオーディン校長に送ってもらい、大神殿へと戻ってきた。
普段21時には就寝する大神官が、腕組みしながら待つ執務室に通された時には、流石の恐れ知らずの俺でさえ、背筋にひやりと冷たい感触が流れるのを感じたくらいだ。
執務室の扉を開けると、大神官の視線が痛いくらい注がれているのが分かる。いきなり怒鳴るでもなく、こちらが無言の圧力に根負けするのを待ってから、怒涛の如く長い説教が始まるのだ。
《間違いなく、夜明けまで説教コースだなぁ》
などと思い、眠気と疲労を抑えるように、俺は口を押さえる振りをして小さく欠伸をする。
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