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危うく声を発しそうになったところで、ライに制止され、俺はその場で言葉を飲む。
見覚えのあるナイトドレスに身を包んだその人物は、松明を持っているが、スタスタと門の方へと歩いていくではないか。わずかな光で、この広くゴツゴツした地面も多い道を迷いなく歩けるはずがない。
《あれは………エレナ…だ》
自分で発した名前に驚いた。
見覚えのあるナイトドレスで、この大神殿の既製服でもある女性専用衣装であることは分かるが、夜を怖がるエレナがあろうことか暗闇の中1人で出歩くなんて、到底ありえないことなのだ。
『まさか…そんなはずは。エレちゃんの声も聞こえないし、気配も感じないぞ?リヒトの見間違いじゃ…?』
《いや、あれは確かにエレナだよ。それに…なぜか門に向かってる。え…?》
キィィィィィィィィン
その時、ひどい耳鳴りが襲い、思わず窓枠から手を離しそうになる。ライも同じだったらしく、苦しげに呻く声を最後に、通信は途絶えてしまった。俺も俺で意識を保つのがやっとの状態で、なんとか窓から地面に降りると、そのままベッドに倒れ込む。
そうして、薄れゆく意識の中で聞いたのは………激しい爆発音と、なにかが崩落する音だった。
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