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僕が食卓につくと、いつものように出来立てのご飯が顔を並べていた。
「いただきます」
ひとつ声を上げて、僕は箸を取る。
「はいどうぞ」
母さんが声をかける。今日の朝食はわかめの味噌汁に目玉焼き(僕の好きな半熟だ)、ご飯とお漬物。それに秋刀魚の味噌煮。これは昨日の残りだろうな。
「母さん、醤油とってくれない?」
ウイーンというかすかな音がして上のほうから銀色の触手が伸びてくる。その触手は台所に置いてある醤油入れを器用に持ち上げ、僕の前に静かに置いた。
「さんきゅ」
まだ湯気の立っている目玉焼きの上を醤油が滑っていく。傘から滑り落ちる雨みたいだ。
「お醤油かけすぎないでね」
「はいはい」
母さんは調味料をよくけちる。調味料だけは洗い流さなくてはいけないかららしい。他の残飯なんかは一度処理機にかけてからまた新しい食品に姿を変えられるんだけれど。
皿の上のものをぺろりと平らげ、僕は手を合わせた。
「ごちそうさまでした」
僕の声と同時に、皿が乗っている部分がそこだけすっぽりと切られたかのように沈み、机の下へと消えていった。
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